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平成12年 日本小動物獣医学会(中部)発表 2000年9月3日   猫巨大結腸症に対する結腸亜全摘術の新手技に関する検討                         ○山田英一(新潟県開業)  柴田 武志 (岐阜県開業)

1.はじめに 演者らは猫巨大結腸症の結腸亜全摘術に対し,術者の熟練度を必要としないsurgical stapler法(以下GIA法)またはレーザー溶接法(レーザー法)による結腸亜全摘術を提唱した。今回は,この二法に対し腸管吻合を機能性端々吻合法と開放管腔法についてそれぞれの臨床経過を比較し,臨床上有効な知見を得ることができたので報告する。 2.材料および方法 機能性端々吻合法を行った症例は体重3.2〜4.5kg。年齢は3〜11才の猫巨大結腸症6例であった(GIA法4例,レーザー法2例)。原疾患は骨盤骨折に続発するもの4例,特発性のもの2例であった。開放管腔法を行った症例は体重2.8〜6.0kg。年齢は4〜10才の猫巨大結腸症8例であった(GIA法5例,レーザー法3例)。原疾患は骨盤骨折に続発するもの5例,特発性のもの3例であった。術後経過の観察は2〜4年間であり,術後管理に緩下剤投与や食餌療法はおこなわなかった。 3.結果および考察 機能性端々吻合法において便秘の再発があったものは6例中4例で術後7ヶ月〜2年3ヶ月にみられた。再発例の処置は,4例全てに開放管腔法をおこない,その後の再発はみられなかった。開放管腔法においては8例中2例で術後2年7ヶ月と術後3年4ヶ月後に便秘の再発がみられた。再発例の処置は,2例とも浣腸処置で宿便を排除し,その後lactuloseの投与で良好に経過している。 巨大結腸症の本態は,全結腸の輸送能低下をきたすslow transitにあるといわれている。したがって,結腸部分切除術だけではslow transit constipationが改善されないのは当然で,根治的治療として結腸亜全摘術が必要なのは合目的であると考える。しかし,人医においても結腸亜全摘術がはじめて施行された1972年当時は,その手術死亡率が28%と高率であったことで,いかに手技および術後管理が高度であり,本症に対してその術式がほとんど施行されていないのが実情であった。演者らもその術式に対する経験不足より,適応に関してはかなり慎重にならざるを得なかったが,GIA法およびレーザー法でその点が解消された。今回は,吻合法の術式を機能性端々吻合法と開放管腔法における術後経過を比較してみたところ,GIAおよびレーザー法において縫合部の癒着の少ない開放管腔法が便秘の再発も少ないことが判明し,本疾患の根治術の一方法として提唱するものである。

 

平成12年 日本小動物獣医学会(中部)発表 2000年9月3日

新潟県における猫の犬糸状虫症感染に関する調査−続報−
  ○住吉 浩、 今山 行夫 、片野 修一、椿   洋、 長島 文幸、 山田 英一(新潟県開業)

1.はじめに 近年,猫の犬糸状虫症(FHD)関する認識の高まりにより,国内外を問わず多くの報告がなされている。その中でも,日本−猫フィラリア症予防研究会により全国的なFHD疫学調査が行なわれ,抗原および抗体検査によるFHD陽性率が示された。また,われわれも,新潟県内におけるFHD感染の実態を把握するため,同地域における猫と非フィラリア予防犬の抗原検査を行なうことにより,FHDの県内地理的分布を明らかにした。  今回は,続報として4年間の継続調査していた結果と日本−猫フィラリア症予防研究会の報告との比較およびFHDの症例についての検討を行ったので報告する。 2.材料および方法 調査の対象に供した猫は,年齢が確実に把握可能で,検査前年度の感染期を経過した1才以上で,飼育方法および飼育環境が明確な有疾病または健康な飼育猫を対象とした。調査地域は,新潟市をはじめ長岡市,加茂市および三条市,上越市,新発田市およびそれら周辺の市町村である。調査期間は,1996年4月より2000年4月末とした。検査方法は,猫血液に抗凝固剤を添加して作成した血漿を検体とし,アイデックスラボラトリーズ(USA)社製造のスナップ・ハートワームにて抗原検査した。Mf検査は遠心法とした。今回の調査と同時に,犬濃厚感染地域を特定するため,犬における犬糸状虫感染の調査もおこなった。犬の対象は,猫と同条件のものに加えて,フィラリア予防薬を投与していないという条件を加えた。 3.結果および考察 調査した猫216例中3例(1.39%)が抗原検査陽性であった。陽性猫3例中1例がMf陽性であった。また,陽性猫3例は同地域の非フィラリア予防犬抗原検査陽性率25%以上の犬濃厚感染地域で飼育されていた。これらの結果は,全国の抗原検査陽性率2.6%より低いものであったが,1県単独の調査としては対象例数が多いためで,けっしてまれな疾患であるとはいえないものと考えた。 FHD 3臨床例中2例は,来院から数日後に死亡した。死亡原因は,フィラリアに関係するものか特定はできなかったが,いずれの症例も食欲不振や嘔吐などの一般的な主訴で上診したことから,FHDを考慮した日常の診療が必要なものであると思われた。