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犬のハンセンT型椎間板ヘルニアの3D-CT画像所見による手術アプローチ法の検討とその臨床学的評価

○山田 英一(新潟県開業) 片野 修一(  〃  ) 住吉  浩(  〃  ) 山我 義則(  〃  ) 柴田 武志(岐阜県開業)  岡本 芳晴( 鳥取大学 )

1.はじめに 
犬椎間板ヘルニアに対する外科手術の適否やアプローチ法の診断は、主にレントゲン脊髄造影検査法によっておこなわれている。しかし、最近ではX線CT(以下CT)やMRIによる画像診断法も検討されている。今回われわれは、犬のハンセンT型の椎間板ヘルニア症例に対して術前および術後に単純CT検査をおこない、得られた画像を比較検討した。その結果、手術方法立案に極めて有効な情報を与える検査法であると思われたのでその概要を報告する。
2.材料および方法 
対象とした症例は、術前の単純CT検査により脊柱管内に椎間板物質が逸脱していることを確認した犬25例(体重3.5〜16kgの頸椎ヘルニア8例、胸腰椎ヘルニア17例)であった。それぞれの症例は、3D-CT画像により責任椎間、逸脱した椎間板物質の三次元的な解剖学的部位や脊髄の圧迫程度を分析した。分析の結果、得られた情報により逸脱した部位に対して可能な限り小さく有効なスロットを作製する手術アプローチ法を検討した。そのアプローチ法を参考にして手術した全例は手術直後に再度単純CT検査をおこない椎間板物質の除去程度を観察した。CT撮影は全例全身麻酔下におき、V字型の保定台に仰臥位にし、120KV、75〜100mA、2mmピッチでヘリカルスキャン撮影した。
3.結果および考察 
 全例においてスロットの作成した部位から逸脱板物質を確認でき、それを除去することができた。術後のCT所見から逸脱物質を除去できたものをT群(80%以上除去できたもの15例)、U群(60〜80%程度除去できたもの6例)、V群(60%以下の除去率のもの4例)に分けた。

頸椎ヘルニア症例では、1回の手術で逸脱物質の除去が不完全であった 例で、数日から1週間後に再度手術を試み、完全に逸脱物質を除去することにより、臨床症状も順調に改善した。また、同時に2カ所見により完全な逸脱物質の除去が確認され、臨床症状も速やかに改善した。以上の結果により以上にスロットを作製した例もあった。胸腰椎ヘルニア 例では、術前後の画像所、今回の改良手術法は正確な病巣部位をCT像で把握することにより、手術時間が短縮され、ピンポイントでスロットを作製することができ、椎体の安定性も保たれるため、臨床的に非常に有用な方法であると考えられた。また、手術前後のCT画像所見を比較することで、ハンセンT型椎間板ヘルニアの手術自体の成否を評価でき、臨床症状の改善具合も推測が可能であると考えられた。

犬の門脈体循環シャントにおける造影3D-CT法の検討


○山田 英一(新潟県開業) 住吉  浩(  〃  )片野 修一(  〃  )山我 義則(  〃  )
柴田 武志(岐阜県開業) 岡本 芳晴(鳥 取 大)

1.はじめに:門脈体循環短絡症(Portosystemic shunt,PSS)の短絡血管の特定は門脈X線造影法が一般的である。しかし、非手術的に末梢静脈からの造影で腹腔内の主要動静脈をX線CTで検討したという報告はみられない。そこで、対照犬と犬PSS1例に橈側皮静脈から造影CTを行い、3D-CTにて腹腔内血管の走行について検討した。
2.材料および方法:症例はシェルティ、雌、1歳5ヶ月齢、体重4.8kg。突然の沈うつ、けいれん発作を主訴に来院し、NH3529μg/dl、TBA250.0μmol/lが顕著に高値を示し、PSSが強く疑われたものを用いた。対照例は同腹犬のシェルティ、雌、10.5kgの1例を使用し造影剤投与量の検討に用いた。症例は第27病日に全身麻酔下で単純撮影、造影CT、門脈造影、門脈造影CTなどのX線学的検査を行い、それぞれを比較した。単純および門脈造影は通常の方法に準じ、造影CTでは造影剤にイオヘキソール(ヨード量300mg/ml)を用いた。総注入量は4ml/kgを1回の造影CTに使用した。注入方法は、はじめ全体の2/3量を毎秒2mlで注入し、残量の1/3を実際にスキャンが開始するまでの6秒間で注入した。症例の門脈造影と対比するために行った門脈造影CTは、開腹下で腸管膜静脈より1ml/kgのイオヘキソールをスキャン中毎秒0.1mlにて持続注入した。また術後6ヶ月に血管走行を検査する目的で末梢静脈から造影CTの再検査を実施した。
3.結果および考察:症例および対照例において、造影CTから作成した3D-CTによって腹腔内の主要動静脈の識別が可能であった。また症例の術中所見にて門脈から派生し、末端部が5×10mm程度に腫大した血腫様の血管が認められ、後大静脈−左腎静脈分岐部に連絡した直径5mm程度の血管が認められ、さらに、多発性シャントが確認されCT所見と一致した。これらの所見は術前の造影CT検査なしでは術中での血管走行を確認するのに困難であったと思われた。術後経過は良好であったが術後6ヶ月の検査で数ヶ所のシャントが確認された。この所見により臨床像は良好であるが再発が示唆され、再手術の検討に極めて有効な検査所見であった。
以上の成績から、PSSの確定診断に造影CTは末梢静脈から繰り返して行え、非観血的で極めて有用性の高い検査法であるものと思われた。

 

CTを中心とした犬の椎間板突出・逸脱症の画像診断

○住吉 浩(新潟県開業) 片野 修一(  〃  ) 小島 英彦(  〃  )山田 英一(  〃  )
                          岡本 芳晴( 鳥取大学 )

1.はじめに 犬の椎間板突出・逸脱症は,これまで単純X線または脊髄造影所見により画像診断がなされてきた。しかし近年では、診断機器・技術の発達によりX線CT(以下CT)やMRIなどによる断層画像を用いた報告例も多くみられるようになってきた。今回われわれは、犬の椎間板突出・逸脱症例に対して,単純CTおよび脊髄造影CT撮影をおこない,最新の解析ソフトによる画像解析によって,立体的に再構築されたCT画像をもとに3D−CT画像をもとに多方向からの割面像の描出を試みた。また,同時におこなった単純X線および脊髄造影所見も合わせて総合的に椎間板病変に関する画像診断の有用性について検討した。
2.材料および方法 対象症例は,神経学的検査および臨床症状から椎間板突出・逸脱症が疑われた犬 8例で,飼主との十分なインフォームド・コンセントにより,全身麻酔下で単純および脊髄造影法によるX線ならびにCT撮影をおこなった。CT装置はPronto(日立メディコ)で、撮影ポジションは頚椎部位は伏臥位または横臥位、胸腰椎部位は仰臥位で撮影した。得られた単純および造影CT画像を画像解析ソフト(Q-Net View ver.2.0,日立メディコ)により,3D−CT画像を構築した。診断に用いた供試材料は,単純X線および脊髄造影X線画像,単純CTおよび脊髄造影CT断層画像と3D−CT画像であり,これらの画像から病変部位の特定や病態の解析などをおこなった。
3.結果および考察 病変部位については,頚椎部のみのもの 2例,胸腰椎部 5例,頚部−胸腰部両方に認められたもの 1例であった。各種画像診断上,脊髄造影CT画像で最も詳細な病変部の観察がおこなえ,突出・逸脱した椎間板が脊髄を圧迫している様子が認められた。また,3D−CT画像では,立体的で多彩な色調の病変部が再現可能で,飼主への説明および手術計画を立案する上で非常に有用であった。X線脊髄造影画像では,照射のタイミングやポジションなど最適な条件で撮影をおこなうのが困難であった。胸腰椎の症例では,単純CT撮影においても十分診断価値のある画像が得られた。犬の神経系疾患の中で発症頻度の高い椎間板突出・逸脱症の画像診断において,あらためてCTの有用性,利便性が認識された。