犬の椎間板ヘルニアの診断・治療法・手術について

最近、ミニチュアダックスフンド犬が増加し椎間板ヘルニアの症例が多くなってきています。
ダックスフンド犬の約25%は一生の間に椎間板に関連した障害を発症すると言われています。
他の多発犬種はビーグル、コッカスパニエル、ペキニーズ、キャバリアなどです。
症状は、急激に痛みに襲われ、後ろ足に麻痺が生じます。

診断

犬の椎間板ヘルニアの診断は脊髄造影が一般的です。しかし、繰り返しの麻酔やレントゲン撮影が必要でリスクも高く、脊髄神経を得意とする専門獣医師の診察が必要です。
しかし最近ではⅠ型の椎間板ヘルニアはCT検査(3D-CT)により、確定診断できることから注目されています。脊髄神経を圧迫する部室の位置(責任椎間)や量を把握することができることから、外科手術の治癒率向上に役立っています。

なぜ3D-CT検査が有効か?

3F-CTは胸椎や腰椎を立体的に表示でき、悪い病巣を瞬時に判明し、治療に活かせるからです。MRI検査も有効ですが、検査の時間がかかり過ぎること、逸脱した椎間板物質の検出率が同等ということから、検査時間のかからない3D-CTが注目されています。全身麻酔をかけている時間は、は気管内挿管(気道確保するために入れるチューブ)から撮影直前の約3分間ですので安全です。

椎間板ヘルニアの症状によるグレード
グレード1 疼痛のみ 初発 歩行正常
グレード2 疼痛(再発) 姿勢反応低下 運動失調 歩行可能
グレード3 姿勢反応消失 脊髄反応異常 歩行困難 不全麻痺
排尿可能
グレード4 歩行不可能 完全麻痺 排尿自調不可 深部痛覚あり
グレード5 歩行不可能 完全麻痺 排尿自調不可 深部痛覚なし
手術前後
手術直後 手術10ヶ月後には、正常の歩行できるようになり元気を取り戻しました。
症例のCT所見

手術直前のCT検査によって第13胸椎-第1腰椎間の脊柱管に逸脱している所見(黄矢印)が認められています。
左側の椎弓は切除され、ヘルニアによる脊髄神経の圧迫が解除されている所見です。
手術後のCT検査は手術の良否を評価するには不可欠です。

治療法

1.保存療養 軽い症状なら内科治療で症状の緩和がみられやがて治癒します。安静と看護 が重要です。最も悪いのが階段やベッドへの登り動作です。
2.薬物療法 一般的には鎮痛剤やステロイドが投与されますが、病状の程度や類似症状を示す疾患(椎間板脊椎炎など)では禁忌のケースもありますので、詳細な診断が必要です。
3.外科療法 内科治療に反応しない場合、外科手術が必要となります。椎間板ヘルニアにもタイプがあり、急性で椎間板物質が逸脱するⅠ型と、脊髄に圧力がゆっくりと慢性的に加わるⅡとに分類されます。発症から早ければ早いほど治癒率があがりますので専門医に相談してください。

ハンセンⅠ型の症状は激甚で膀胱の麻痺が来て死亡するケースもあります。しかし、速いうちの外科手術により80%以上が回復します。

ハンセンⅠ型椎間板ヘルニア
椎間板が脊椎腔内に飛び出して、 脊髄神経を圧迫しています。
ハンセンⅡ型椎間板ヘルニア
当院では3D-CTでヘルニア部位を確定し、さらに、手術の後にも3D-CT検査をおこない、的確な手術が成されたかの判定を行っています。難易度の高い椎間板ヘルニアの手術にはエアドリルや超音波骨メスを使用して椎骨を削りますので、神経の外科的損傷を極めて安全で確実な手術が実現されています。

4.理学療法: レーザーや遠赤外線治療器を用いて、神経の治癒回復を補助しています。コルセットはリハビリに不可欠で、症例に応じたサイズのコルセットを装着することにより、症状の改善、または発症防止に効果的です。

外科手術について

椎間板ヘルニアの手術法:椎間板物質が逸脱している椎間部位の椎骨という骨に穴を開けて、そこから逸脱した椎間板物質を除去して圧迫を解除する片側椎弓切除術による減圧術を行います。そのヘルニア部位を特定するにはCT検査がれています。さらに手術直後のCT検査も、手術が的確に行われたかの判定評価として不可欠です。

手術の適応時期:椎間板ヘルニアのグレード3以上、とくにグレード4~5は緊急性を要するので、症状が発現してから早期に手術することをお奨めします。

手術をした場合の回復率:早期でかつ的確な手術が行われることにより、その殆どが正常または日常に差し支えない程に回復します。しかし、グレード4~5の患者の中には、手術する時期が遅れて脊髄神経の圧迫が進行し、脊髄神経が虚血状態に陥って脊髄軟化症という致死的な状態になる場合が希にありますので、早めに椎間板ヘルニアを専門とする動物病院への受診が必要となります。早期に手術が行われた症例ほど回復がスムーズであります。また、神経や血管に損傷を与えることが少ない超音波メスやレーザーメスなどの手術器具を使用することで、術後の回復を早めることができます。

術後の回復に要する日数:椎間板ヘルニアを発症した患者が絶対安静する期間は、グレード2~では約3週間の入院または自宅でのケージレストが必要です。

犬の椎間板ヘルニアの手術料金(目安):公益社団法人 日本獣医師会が示している「小動物診療料金の実態調査結果」に基づいて、その平均診療費を参考を参考に椎間板ヘルニアの外科治療費の概算を算出してみました。

コルセット療法について

コルセットを装着することにより、体の軸をまっすぐにさせ、同時に脊柱に負担のかかる順ぞり、逆ぞり(エビぞり)を無くし、また、腰振りを少なくさせることで、椎間板ヘルニア症の発症を低下させるとともに、症状を有するケースでも、悪化を防ぐ目的で使用します。
また椎間板ヘルニア症の外科手術後の体軸曲がりを予防し、さらにリハビリ歩行時での後駆牽引補助を可能にする必須アイテムです。

椎間板ヘルニア グレード5の症例で外科手術後3週目の所見です。コルセットを装着して歩行可能となっています。

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